【万引き家族】2018年公開日本映画。万引きをしながら生活する血の繋がりのない疑似家族の絆を描いた作品。
是枝監督が構想10年をかけて作り上げた今作は家族のつながりと絆について深く考えさせられる作品となっている。
キャッチコピーは、盗んだのは、絆でした。
目次
映画情報
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得。日本人監督作品としては21年ぶりの快挙となった。
原題:万引き家族
上映時間:120分
監督:是枝裕和
出演者:リリー・フランキー(柴田治)、安藤サクラ(柴田信代)、松岡茉優(柴田亜紀)、池松壮亮(4番さん)、城桧吏(柴田祥太)、佐々木みゆ(ゆり)、高良健吾(前園巧)、樹木希林(柴田初枝)ほか
【万引き家族】考察ネタバレ解説!安藤サクラが魅せた女優魂や家族の関係性などを紹介!
※ここからはネタバレを含みますので鑑賞前の方は気をつけてください。
あらすじ1/7「ある家族の日常」
東京のある下町の平屋に柴田家は住んでいました。父の治、母の信代、息子の祥太、祖母の初枝、信代の妹の亜紀の5人家族です。
家族の生計は父の治と母の信代が働いて得た給料に祖母の初枝の年金でまかなっていました。そしてもうひとつ、治と息子の祥太の親子でする万引きによる収入がありました。
柴田家は仲が良く貧乏ながらも笑顔の絶えない家族でした。
なるほど家族の収入源のひとつが万引き。
だから「万引き家族」なのか。
あらすじ2/7「ゆりという女の子」
冬のある日、治は近所の団地の隅で幼い女の子が震えてうずくまっているのを見かけます。治は見かねてその女の子を家に連れて帰りました。そして夕食を与えた後、治と信代は少女を家に帰そうと団地の前まで行きました。しかし、家の中からは怒号が飛び合っていました。女の子がいなくなったことにも気づいていない様子を見て、治と信代は女の子を連れて家に帰るのでした。
女の子の名前はゆりという名前でした。ゆりの体には虐待を受けたアザがありました。亜紀は「誘拐じゃんそれ」と言いますが、信代は「脅迫も身代金も要求してないから、これは誘拐じゃない。保護なの。」と言って、ゆりを6人目の家族として迎え入れたのでした。
虐待から救うための誘拐…。
何とも言えない気持ちになる。
本当の家族よりも偽物の家族の方がよっぽど居心地が良さそうなのも皮肉だね。
あらすじ3/7「ゆり改めりん」
ある日、治は日雇いの肉体労働でケガをしました。労災が下りると思っていた治でしたが下りないことが判明します。治は働けないかわりに祥太とゆりを連れて万引きを前より精力的に行うようになっていくのでした。
ゆりが柴田家にやってきて2カ月が経ちました。ゆりの捜索願は出されていませんでした。しかしテレビで失踪事件として取り上げられたことをきっかけにゆりの本名が「北条じゅり」であることがわかります。
治と信代は正体を隠すため、ゆりの名前を「りん」に変え、髪をバッサリと切ったのでした。
捜索願を出した様子がないってことはゆりは必要とされていなかったんだろうな。
ある意味で柴田家に行ったことはゆりにとって救いだったのかもしれないね。
あらすじ4/7「万引き家族の日常」
治は祥太とりんを連れて万引き。信代は務めているクリーニング店で衣服に入っているアクセサリーなどを盗み、祖母の初枝はパチンコで他人のドル箱をネコババしていました。そして亜紀は性風俗店で働いていました。
柴田家は万引きという犯罪を犯す一方で家族としての絆は深く、本当に幸せそうに暮らしていました。
夏には縁側で花火をし、海ではみんな一緒に遊び、初枝おばあちゃんはそれを砂浜から眺めてにこやかに笑うのでした。
祥太の思春期の悩みに父の治がいち早く気づいて「男なら誰でもそうなるんだ。だから恥ずかしいことじゃないんだぞ。」と言う場面は本当にリアリティがあって良い父親だと思った。
あらすじ5/7「初枝おばあちゃんの死」
初枝おばあちゃんが老衰で亡くなりました。
柴田家は年金を受け取り続けるために初枝おばあちゃんの遺体を自宅内に埋め、死亡届けを出しませんでした。そして最初からいなかったものとして生活するようにみんなに言いました。
一方、信代は務めていたクリーニング店の経営不振から同僚とどちらかに辞めてほしいと言われます。同僚に呼び出され、「行方不明中の女の子(りん)を連れているのを見た。このままおとなしく辞めれば誰にも言わない。」と言われます。
信代はそのまま退職するしかありませんでした。
初枝おばあちゃんがいなくなったことで家族の団結が弱まる中、祥太とりんはいつものように万引きをするためスーパーに入りました。
祥太が隙をうかがっていると、りんがおもむろに商品に手を伸ばしました。
しかしタイミングが悪く店員がりんの方へ振り向きます。
祥太はとっさにりんをかばうため、近くにあったたくさんのミカンを目立つように盗み走り出します。
店員が祥太に気づき、追いかけます。
追い込まれた祥太は高低差のある道路の端から飛び降り、足を負傷して病院へ運ばれたのでした。
りんちゃんをかばうため自らを犠牲にする姿は兄の姿そのもの。血はつながっていなくても絆の深さを感じられる場面だった。
あらすじ6/7「家族の崩壊」
祥太が入院したことで警察に事情聴取され、素性が明らかにされていきます。
祥太は柴田家の子どもではなく、りんと同じように誘拐された子どもであることが発覚しました。
りんが家に戻り事情を話したことで柴田家は大急ぎで病院に向かいます。しかし受付で家族でない治と信代は面会を拒絶されてしまいます。
近くには警察もいました。このままではまずいと察した治と信代はその夜、祥太をひとまず置いて残りの家族で逃げることにしました。
柴田家が荷物をまとめて外に出ると、パトカーの光が一家を照らしました。そして柴田家は警察に連行されたのでした。
あらすじ7/7「万引き家族の真相」
警察に事情聴取される柴田家。そこで明らかになったことは全員が血の繋がらない他人だったということでした。
他人同士が身を寄せ合い、本当の家族のように暮らしていたことに困惑する警察たち。
さらに治と信代は過去に殺人を犯していました。そして逃げた先で初枝おばあちゃんと出会い、疑似家族として一緒に暮らし始めたのでした。
信代は事情聴取ですべての罪をひとりで被ります。
そしてりんと亜紀は元の親の元へ、祥太は児童施設に、父の治は釈放されたのでした。
それから一年後。治は祥太と会う許可をもらい、2人で信代の面会に行きます。
そして信代は、祥太が赤ちゃんの時松戸市のパチンコ屋で車の中に置き去りにされているのをみて連れ去ったことを自白しました。そしてその時のナンバーを教え、会おうと思えば本当の親に会うことができることを伝えます。
その夜、治と祥太はあとで怒られることを承知で、治の家に泊まることにしました。ひとつの布団で眠る最後の夜、治は「父ちゃんな。今日で祥太の父ちゃんやめるわ。」と声を震わせながら話しました。そしてあの時祥太を置いて逃げるつもりだったことを白状したのでした。
翌日、祥太は治に見送られてバスに乗りました。バスが走りだします。
治はたまらずバスを追いかけ、祥太の名前を叫びます。しかし祥太は振り向きません。バスはそのまま行ってしまったのでした。
場面は変わり、りんは再び虐待されていました。団地の外廊下でひとり遊ぶりん。ふと外を見たりんは何かをつぶやこうとしていました。
悲しい。悲しすぎる。治と信代がやったことは決して許されることじゃないけど、あの時あの瞬間は、彼らは本当の家族だったと思う。いや家族以上に家族だった気がする。
善悪の価値観が揺らぎそうになる何とも考えさせられる作品だった。
~観終わったあとの感想~
是枝監督作品の特徴にある「これは善いことですか?それとも悪いことですか?」と観た人に問題提起を投げかける作風にまんまとはまってしまいました。引き込まれました。間違いなく名作です。
この映画は泣けます。しかも何の涙か自分でも説明がつかない涙です。家族の温かみとそれでも血はつながっていない奇妙な万引き家族。犯罪でしかつながれなかった家族は悪だったのか。正直私にはわかりません。
樹木希林さんの素晴らしい演技にはいつも引き込まれてしまう。
樹木希林さん今までたくさんの感動をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。