千と千尋の神隠しには多様なキャラクターや神様が登場して物語をにぎわせています。どれもユニークなキャラクターばかりで、観ていて本当に飽きないですよね。
不気味な造形からどこか間の抜けたキャラクターまで宮崎駿の世界観が随所にみられる登場人物たちを紹介していきます。
目次
【千尋の家族】一覧
主人公千尋の家族です。不思議の町に迷い込んだ千尋の両親は無断で食べ物を食べたことによる呪いで豚にされてしまいます。
『千と千尋の神隠し』はそんな両親の呪いを解くべく、千尋が奔走し、成長していく物語です。
➀荻野千尋
湯婆婆との契約で名前を奪われた千尋は「千」として油屋で働くことになります。過酷な労働に最初は音を上げそうになる千尋でしたが、不思議の町の住人達と交流するうちに徐々に元気を取り戻し、成長していきます。
➁お父さん
勝気で外交的な反面、人の話をあまり聞かない性格の持ち主。田舎道を迷ったあげく、好奇心から奇妙なトンネルをくぐります。その先で店主に断りもなく置いてあった食べ物に手を付け、豚にされてしまいました。
➂お母さん
美人だが、どこか冷たく負けん気の強い女性。千尋に対してもドライな対応をしていたことが印象的です。夫同様、無断で食べ物を食べた呪いで豚に変えられてしまいました。
【油屋の人々】一覧
油屋とは、千尋が働くことになった湯屋(旅館)の店名です。経営者は湯婆婆で、古の神々や妖怪など奇妙な存在をお客人としてもてなしています。
➀湯婆婆
2頭身の巨大な頭を持つ魔女。油屋と呼ばれる湯屋を切り盛りする実業家でお金にがめつい性格です。従業員に対して冷酷な反面、自身の子である「坊」に対しては非常に甘く、過保護な一面がある。
➁銭婆
湯婆婆の双子の姉で、瓜二つの姿をしています。湯婆婆のがめつい性格とは反対に穏やかで優しい性格の持ち主です。家を訪ねてきた千尋たちを優しく迎え入れ、別れ際にはお守りとして紫色の髪留めを渡しました。
➂ハク
本当の名前を忘れてしまった少年ハク。見た目は12歳くらいの男の子です。龍の姿に変化することが可能で、不思議な力が使えます。千尋のことを気にかけてくれ、度々助けてくれる優しい性格の持ち主です。千尋との出会いにより、本当の名前を思い出しました。
➃釜爺
6本の手足を持つ油屋のボイラーを担当するおじいちゃん。いつもせわしなく働いていて、職人気質の人物です。油屋では湯沸かしや薬湯の調合をしています。千尋に孫と接するような優しい眼差しを向けているのが印象的でした。
➄ススワタリ
ボイラー担当の釜爺のもとで働いています。どうやら働いていないと魔法の効果がなくなり消えてしまうようです。同じジブリ作品『となりのトトロ』に出てくる「まっくろくろすけ」と同種の存在ですがこちらは手足があり、石炭を運ぶことが出来ます。エサは金平糖です。
➅リン
油屋の先輩従業員。サバサバとした性格で面倒見が良く千尋に色々なことを教えてくれました。いつか海の向こうにある街に行きたいと夢を語っていました。年齢は14歳くらいの設定で、千尋の良きお姉さんという印象でした。
➆坊(ネズミ)
湯婆婆の息子。わがままで自分本位な性格です。過保護に育てられたせいか精神がいつまでも赤ん坊のまま体だけが大きくなったようです。途中、銭婆の魔法によってネズミに変えられ、千尋と旅に出ます。終盤では精神的に成長した坊は千尋の心強い味方となりました。
➇湯バード(ハエドリ)
首から上は湯婆婆の顔、体はカラスの不気味な人面鳥。話すことはできず、カラスの鳴き声を発します。湯婆婆に仕えており、坊を守る役をしています。千尋に対して威嚇したり、敵対心をむき出しにしていましたが、銭婆の魔法でハエのように小さい鳥、ハエドリに変えられました。坊と同じく千尋との旅を通じて、おだやかな性格になりました。ハエドリの姿を気に入ったのか、銭婆の魔法が解けた後も元には戻りませんでした。
➈頭
緑色をした頭だけの生き物。顔は武士のような強面で常に3体セットでいる。銭婆の魔法で千尋たちが留守の間、偽物の坊に変えられました。一説には江戸時代に書かれた「絵本百物語」の3人の武士の生首がモデルと言われています。野太い声で「おいおい」としか言わないどこか間の抜けたキャラクターでした。
➉番台蛙
油屋の中間管理職で、ほかの従業員を仕切る立場にあります。番台で薬湯の札の管理を任されています。平安貴族のような烏帽子と水干を身に着けており、当初は人間の千尋を毛嫌いしていました。カオナシに飲み込まれたところを千尋に命を救われ、その後は態度を改めました。
⑪番台蛙(父役)
番台蛙の上役(上司)にあたり、部長に相当する役職。番台蛙同様に平安貴族のような烏帽子と水干を身に着けています。油屋で働くことになった人間の千尋を受け入れられず、湯婆婆に反論しました。終盤では千尋の味方になってくれています。
⑫番台蛙(兄役)
番台蛙の上司。千と千尋の神隠しに登場した番台蛙の3人は役職で言うところの「番台蛙=係長」「父役=部長」「兄役=課長」にあたります。父役と一緒に千尋が油屋で働くことに反対しました。こちらも同様、終盤には千尋の味方になってくれます。
⑬青蛙
蛙の姿に青い甚平を着ています。特徴的な声が印象的で金に執着があり、そのせいでカオナシに飲み込まれてしまいます。飲み込まれた後はカオナシの声になり、性格も青蛙に寄っていました。この世界の蛙は出世するごとに人間の姿に近づいている傾向があるため、かなり位の低い従業員だと思われます。
⑭男性従業員
油屋での男性従業員は大半が蛙の化身です。そのため、似た容姿の従業員が『千と千尋の神隠し』にはたくさん出てきます。
⑮女性従業員
油屋で働く女性従業員。男性が蛙であるのに対して、女性はナメクジの化身と言われています。その理由は諸説ありますが、湯婆婆が油屋での経営を潤滑にするため、「三すくみ」の状態を作り上げたという説が有力です。
湯婆婆が作り上げた三すくみの関係とは?
ハクは龍の化身(ヘビ)なので、ヘビはナメクジを恐れ、ナメクジはカエルを恐れ、カエルはヘビを恐れるとする古来より伝わる故事にならうことで、従業員同士の結託や揉め事をなくしているようです。本当だとすると、さすが敏腕経営者の湯婆婆。えげつないことを考えるものですね。
【神様】一覧
千と千尋の神隠しには様々な八百万の神様たちが油屋に癒しを求めて訪れます。ユニークな見た目からどこか怖さを感じる神様まで多種多様な姿で登場しています。
➀オクサレ様
全身ヘドロで覆われた神様。口からは紫色の腐臭を放ち、歩いた後はヘドロでどろどろになります。相当くさいらしく、オクサレ様の入館を止めようとした青蛙が気絶するほどでした。
千尋によって最高クラスの薬湯につかり、体に詰まっていたゴミを取り除いたところ、正体が「名のある河の主」であることが判明しました。
汚れを落とすと正体は…
➁ニギハヤミコハクヌシ
「コハク川の神様」で白銀の龍の姿をしています。正体は少年ハク。彼は名前を忘れたことにより、自由になることが出来ず湯婆婆の弟子として油屋で働いていました。千尋は幼いころ住んでいた近所の「コハク川」で溺れたことがあり、そこでハク(ニギハヤミコハクヌシ)と一度会っていたのでした。
➂カオナシ
黒いマントに仮面をつけたような風貌をしており、人間の心の弱い部分を具現化した存在。欲望に忠実で、人とのつながりに飢えているカオナシは、優しくしてくれた千尋を追いかけ、油屋に侵入しました。他人が欲するもの(金)をエサに油屋の従業員を次々と喰らい、ふくれ上がるその姿はまさに際限のない欲望を表しています。
カオナシの正体とは…
カオナシの正体は「神様でも妖怪でもない異質な存在」と言われています。承認欲求が高く、自己表現の下手なカオナシは現代人が抱える闇(ジレンマ)を象徴する存在として描かれました。宮崎駿監督はカオナシについて「神様ではないが、みんなの心の中にカオナシはいる。」と発言しています。
➃オオトリ様
愛くるしい姿が特徴の「ヒヨコの神様」。みんないっぺんにお風呂につかるシーンはとても可愛らしく、本作では度々、隅の方に登場しています。オオトリ様の正体は、ニワトリに成長できずに死んでしまったヒヨコが神様になったものとされています。
➄おしら様
真っ白な巨体に赤いふんどし姿をした神様。性格は穏やかで子供好きだそうです。おしら様の正体は「大根の神様」と言われています。青森県、岩手県などで信仰されている「オシラ様」がモデルとされています。
➅おなま様
秋田県で伝わる有名な「なまはげ」がおなま様の正体と言われています。ワラをまとい、鬼の仮面をかぶった姿をしていて怠け者や悪い行いをした者を戒める存在です。油屋では集団で来館し、和やかな表情でくつろいでいました。
➆春日様
赤い覆いに春日大社のお札をつけた透明な神様。宮司のように両手を前で組み、尺を持ちながら歩くのが特徴です。油屋では集団で訪れ、硫黄の上の湯を好んでいたと言われています。
➇牛鬼
鬼の頭に牛の胴、または牛の頭に鬼の胴を持つ妖怪です。本来、地獄の獄卒である牛鬼は、非常に残忍かつ獰猛な性格をしており、毒を吐いて人を食うとされています。そんな恐ろしい存在がジブリの手にかかれば、なんとも愛着のあるキャラクターに昇華されているのがニヤッとしてしまいますね。本来のイメージとのギャップからジブリファンから密かに人気のあるキャラクターです。
➈お台所様
大きな笠を頭から被り、笠の縁から包丁などの台所用品をぶら下げている神様。古来より日本各地で伝承されていた台所(かまど)に宿る神様がモデルと言われています。お台所様は千尋が息を止めてハクと橋を渡っている時にすれ違いました。
➉むすび様
⑪そのほかの神様
千と千尋の神隠しには名前や設定が公表されていない様々な神様がたくさん出てきます。どれもユニークな姿をしていて、お世辞にも神様には見えない風貌のキャラクターも多々見られます。男衆たちの会話に名前だけ出る「ひとことぬし様」や「のの様」、「あんが様」なども存在するようです。
千と千尋の神隠しを観る際には、そんな多種多様な八百万の神々に注目してみても面白いかもしれませんね。
もう一度観なおしてみたくなっちゃった!