ターゲットの夢に潜入してアイデアを盗む産業スパイのコブはサイトーという日本人からアイデアを植え付けるインセプションの依頼を受ける。
インセプションを成功させれば、コブのアメリカでの犯罪歴は消え、家族に会うことができる。高難易度のミッションに加え、様々なアクシデントがコブたちを襲うが何とかミッションを成功させ、コブは家路に着く。
コブはテーブルの上で夢と現実を区別するためのアイテム、トーテムと呼ばれるコマを回す。コマは回り続け、コブはコマの結末を見届けるのをやめて、そのまま家族のもとへ行く。
映画【インセプション】あらすじネタバレを感想・解説付きで紹介!(前編)
映画【インセプション】あらすじネタバレを感想・解説付きで紹介!(後編)
目次
夢を判別するトーテムってなに?
インセプションでは、ドリームマシンを使い、夢に潜入します。夢の中では今いる場所が現実なのか夢なのかわからなくなる場合があります。
そんな時、便利なのがトーテムと呼ばれるアイテムです。トーテムは夢か現実かを判別することができるんです。便利ですね~。
このトーテムはコブの奥さんモルによる発案で生まれたもので、自分だけが知る質感や重さを伴った物質でなければいけません。他人に触らせるのはNGとされていますが、これは他人が悪用するのを避けるためです。
トーテムは、夢の中では少し不自然な動きをします。例えばコマを回すと現実では、勢いがなくなると止まりますが、夢の中では永遠に回り続けます。なんとも不思議なアイテムですが、このトーテムのおかげで今、自分が夢にいるのか現実にいるのか判別できるのです。
偽装トーテムを使えば、相手にここが現実だと思わせることも簡単なので、騙されないためにも基本的に触れさせてはいけないという訳です。
メンバーのトーテム一覧
トーテムは自分自身を保つアイデンティティーのようなものです。どんなものでも良いのですが、質感や重さを熟知している必要があるので、手になじむ見慣れたものが好まれます。
コブのトーテム
コブのトーテムはコマです。これは亡き奥さんモルから引き継いだものです。
現実では勢いがなくなると止まりますが、夢の中ではコマは回り続けます。
奥さんとはいえ、他人のトーテムって使っていいの?
そう思った人も多いでしょう。本来ならオリジナルのトーテムを用意するのが定石なんですが、この主人公コブという男は、人にやってはいけないという割に自分ではすぐにやっちゃう性格の持ち主なんです笑。
劇中でも仲間のアーサーに、「彼がやってはいけないと言ったなら、彼はすでにやっている。コブとはそういう男だ。」と言われています。
このことからもコブは基本あまのじゃくなので、モルのトーテムをそのまま使っちゃっているんですね。こういうところにも主人公の性格があらわれていて面白いですね。
もちろん奥さんの形見だし、見慣れているから使っているっていうのもあるとは思いますが。
アリアドネのトーテム
アリアドネのトーテムはチェスの駒です。
劇中ではどのように使うのかは描写されていませんでしたが、おそらく質感や重さに夢と現実で変化があるのかもしれません。
また一瞬ではありますが、アリアドネがチェスの駒を倒して何かを確認するシーンがあります。
ここから推測できるのは、
- 倒すと夢ではダルマのように起き上がる。
- 質感や重さが夢と現実で異なる。
- 夢では投げ落とすと必ず頭を上にして着地する。
の3つのうちのどれかの可能性が高いのではないでしょうか。
いずれにしても推測の域を出ませんが、トーテムの使い方は原則、他人に知られてはいけないものなので、アリアドネのトーテムを通して、劇中で説明しないことが逆にインセプションのルール説明となっているんでしょうね。
アーサーのトーテム
アーサーのトーテムはサイコロです。
こちらも劇中では一瞬しか登場していませんので、どうやって使うかは不明です。ですが、アーサーはこのサイコロを「イカサマ用サイコロ」と呼んでいました。サイコロとは通常1~6の目があるのですが、イカサマ用サイコロでは6が2面あったり、1が2面あったりします。
そこから推測できるのは、
- 夢の中では無いはずの目が出る。
- 夢の中では同じ目が出続ける。
- 逆に夢では均等な確率の目が出る。
の3つなのではないでしょうか。
アーサーの性格上、同じ目が出続けるといった想像通りの使い方ではなく、ひとひねり加えたおしゃれな使い方をするかもしれませんね。
イームス他のトーテム
イームス、ユスフ、サイトーのトーテムは劇中では一切触れられていません。トーテムはコブの奥さんモルの発案です。もしかすると元々この3人はレギュラーメンバーではないのでトーテムを持っていなかったのかもしれません。
インセプションの意味がわからない
映画を見たけど、複雑でよくわからなかった・・。
ち密なストーリー構成で描かれるこの映画は、伏線や専門用語が多くて意味がよくわからなかったという意見をよく聞きます。
そこで簡単に用語の説明をしていきたいと思います。
- インセプション‥夢のなかに潜入してアイデアを植え付けるミッション。
- エクストラクション‥夢の中に潜入してターゲットのアイデア(秘密)を盗むミッション。
- ドリームマシーン‥夢の中に潜入するための機械。鎮静剤などを使って眠り、ターゲットの夢に潜入することができる。
- キック‥落下感をともなう衝撃を加えることで1階層下の人間を強制的に目覚めさせる。
- 夢の階層‥夢には階層があり、1層、2層、3層とおりるたびに夢は不安定になっていくが、逆にターゲットの深層意識に近づくことができる。
- 虚無‥3層以上おりると時間の凝縮によって永遠の時間が流れる層にたどりつく。そこは虚無と呼ばれる場所でそこから抜け出るには、死ぬしかない。
- 時間の凝縮‥夢の中では時間が凝縮される。夢での1時間は現実の5分に相当し、夢の階層が深くなればなるほど、時間の凝縮は倍々になっていく。
- 潜在意識の武装化‥インセプションの世界では、アイデアを盗まれないように専門家の指導の下、潜在意識を武装化する訓練を受けることがある。
- Mr.チャールズ作戦‥ターゲットに夢であることをバラして、自分は潜在意識の武装化によってあなたを守るために生まれたという嘘をつき、手っ取り早くふところに入り込む作戦。
キックのルールが複雑すぎる件
キックのルールがこの映画を複雑にしているひとつの要因であることは間違いないですね。
諸説ありますが、有力だと思われる説をまとめていきます。
まず、キックは落下感をともなった衝撃でなければいけません。本来のミッションであれば、ただ衝撃を与えるだけでも起き上がることは可能です。しかし鎮静剤が強力な場合、ただの衝撃では起きられません。
なぜ落下感をともなわなければいけないのかというと、これは調合師ユスフが調合した特別な鎮静剤を使用しているためと思われます。
劇中でも、ユスフの調合した強力な鎮静剤で眠ったアーサーにビンタをするシーンがあるのですが、アーサーはぴくりともしません。しかし、椅子を傾けて倒そうとすると、アーサーはすぐさま目を覚ましました。
この特殊な鎮静剤のおかげで、キックに三半規管を揺らす落下感を加えなければならないという制約がついてしまったんですね。
夢の中で死ねば通常は目覚めるはずが、なぜか虚無に落ちてしまうのもこの強力な鎮静剤のせいです。
ユスフめ。ややこしいことしやがって笑。
次にキックの性質ですが、キックは隣り合ったひとつ下の階層の人間にしか効果はありません。
3層目まで行った人間に対して、一層目からキックをしても、2層目で眠っている人間には効果がないのです。
つまり3層の人間が現実に戻るためには、2層からのキックで目覚め、続いて1層からのキック、現実からのキックといったふうに順々に目覚めさせていく必要があるのです。
ただし現実世界でキックをすれば3層だろうと虚無だろうと目覚めることはできます。
ではなぜ、作戦が終わったのち、順々にキックであがっていったのだろうと思うかもしれません。
その理由はタイミングの問題だとおもわれます。現実世界では、夢の状況が分からないので、キックのタイミングが計れないのです。そのため、一層ごとにキックのタイミングを計っていたというわけです。
雪山の爆発は何だったのか?
インセプションを難解にしているもうひとつの要因はおそらくこれでしょう。
アリアドネが虚無から現実に戻る道順で不可解なのがこのイームスの雪山病院の爆破です。
アリアドネはロバートと共にビルから飛び降りて死亡することで、3階層目で目を覚ましました。そして2階層にいたアーサーのエレベータ爆破キックで、2階層目で目を覚ましました。そして最後にユスフの車が海に着水する衝撃で1階層目に戻ってきました。
ここで疑問に残るのはイームスの雪山病院の爆破です。アリアドネたちを引きもどすために行ったのであれば、アリアドネがビルから飛び降りた意味がなくなります。また虚無からの脱出は死ぬしかないので、病院を崩落させてもアリアドネたちは目を覚ましません。
ではなぜ、イームスは病院を爆破したのか。ここからは推測ですが、イームス、サイトーは病院内で籠城し、敵からの侵入をぎりぎりのラインで防いでいました。しかし、敵は倒しても倒しても湧いてきます。このままでは敵の侵入を許してしまいます。そこで最後の手段として、病院を爆破して少しでも時間を稼ごうとしていたのではないでしょうか。
それにしてもあの爆破は確実に柱を狙っていたし、崩落させることが目的ともとれる謎行動です。そこらへんは監督の溝知るといったところでしょうか笑。
モルって何者?なんで出てくるの?
夢に出てくるモルは実在のモルではないんですね。これはモルを図らずも殺してしまったコブが抱く罪悪感から生まれた、いわば亡霊のようなものです。そのため、どの夢の階層に入ろうが必ず現れます。
またモルが夫であるコブの邪魔をするのは、以下の理由が考えられます。
- コブに構ってもらいたいから。
- モルは自分を恨んでいるはずというコブの罪悪感から。
- コブを夢の世界に封じ込めておきたいから。
一番可能性のある答えとしては、2番ですかね。それほどコブは自分が許せず、モルによる報復を無意識で望んでいたのかもしれません。その説が本当だとすればなんとも物悲しさが残ります。そんな切ない亡霊がモルの正体ではないでしょうか。
虚無にいたサイトーが老いていたのは何故?
ここもインセプションを難しくしているところですね。時間の凝縮によって虚無では永遠ともとれる時間が流れています。ここまではわかるんですが、コブの方が先に虚無に落ちていたのに、あとから落ちたサイトーだけがなぜ老いていたのか。それが謎です。
①コブの経験と技術で夢では歳を取らなかった説
これも推測ですが、コブは以前に虚無の中で、モルと自分たちだけの世界を創っていました。コブはその経験から、虚無の中で歳を取らない技術を身につけていたのかもしれません。イームスがした偽装のようにトレーニングを積めば、夢の中では別人になりすますことも可能です。長らく虚無にいたコブは技術と経験からおそらく夢の中でも歳をとらなかったのではないでしょうか。
②コブとサイトーは別の虚無にいた説
もうひとつの推測ですが、コブがいた虚無とサイトーがいた虚無とでは別の可能性があります。コブは、虚無の中、何かしらの方法を用いて、別の虚無に入ったサイトーの夢に潜入したということです。それならば、コブがサイトーの虚無に入ったころには時間の凝縮によって何十年も歳を取ってしまったサイトーと会ったのも納得がいきます。
③コブが時間を置いて死んだ説
時系列で言うと、まずアリアドネが虚無から抜け出すと、病院はちょうど崩落しかけの瞬間でした。そこにキックのタイミングが上手くかち合い、2階層、1階層とアリアドネは順々に階層を上がっていきました。
虚無(自殺)⇒3層(キック)⇒2層(キック)⇒1層⇒現実
一方虚無にいたコブは、モルに襲われた時の刺し傷で、アリアドネとは少し時間を置いて死にます。そして上の階層(雪山の病院)で目を覚ますのですが、イームスの爆破によって病院は崩落した後でした。コブの体は崩落に押しつぶされ、また死にます。
再び虚無に入ったコブは、冒頭の砂浜で目を覚まします。そこで先に虚無に入り、長い年月を経て現実と夢の区別ができなくなったサイトーと再会したということです。
またコブとサイトーは再開したのち、銃で自殺します。そこから3階層で目覚めるのではなく、一気に現実に戻ります。これは夢の主が目覚めたせいで、1層から3層目までの夢自体が消失したため、一気に現実に戻れたと考えられます。
虚無(死亡)⇒3層(死亡)⇒再び虚無へ(サイトーと自殺)⇒現実
最後の結末はどっち?
コブが家路に着いた後、トーテムを回すのですが、そのトーテムの行方を待たずにコブは家族のもとへ行ってしまいます。
トーテムのコマは、止まるのか止まらないのか絶妙なタイミングのまま暗転し、映画は終わってしまいます。にくい演出なのですが、やはり心にもやもやが残りますよね笑。
長らくこのコマ問題は、ファンの間で多くの熱い議論がなされてきました。そしてついにノーラン監督自身がその答えを米エンタテインメント・ウィークリー誌で明かしてくれました。
以下引用
ノーラン監督は、「インセプション」の公開後、これまでに発表したどの作品よりも、このナゾについて質問を浴びせられているという。「『あの場面でこう描かれていたから、あれは現実なんですよね?』とか、『ああいう場面があったから、あれは夢だってことなんですよね?』と聞かれる。でも、映画のなかにどちらか一方であることを指し示すヒントが含まれていたとしたら、それはぼくがミスを犯したということになる」
曖昧な結末こそ、ノーラン監督が意図したもの。「ぼくにとって、『インセプション』にはあのエンディングが最もふさわしいように思えた。最も適切な“キック”(夢からさめるための衝撃のこと)だと感じていたんだ。ラストシーンで最も大事なのは、そして質問に対するぼくの回答だが、コブがコマを見ていないという点だ。コブはあのとき自分の子どもたちを見ていた。彼はコマを捨てたんだ。それこそが、あの場面において最も大事なことなんだよ」
う~ん。結局どっちなんだろう笑。
ノーラン監督が言いたかったのは、コブはもうコマを見るのをやめたということです。現実であれ、夢であれ、コブ本人がそれを受け入れたのであれば、そこはもう現実だということでしょうか。胡蝶の夢の話にも通じますが、結局本人がそう信じたものが正解といった解釈で良いんだと思います。
そういう声もあると思います。
そこで諸説ある中でもっとも有力な説を紹介したいと思います。
結論として、コマは止まったという説です。
劇中で、コブは「夢の中で子供たちの名前を呼ぼうとすると必ずどこかへ行ってしまう。あの子たちの顔をみるには現実で会わなければいけない。」と発言しています。
しかしラストでは、成長した子供たちが振り返り、はっきりと顔を見せます。
それすらもコブが望んだ夢だったのではないかと言う反論もありますが、それならばコブが名前を呼んでから顔を見せるのがコブが望む予定調和の夢ではないでしょうか。
ラストの場面、よく観るとコブは名前を呼んでいません。義父が子供たちを呼び、子供たちは振り向くのです。あれほどまでに望んだ「子供の名前を呼ぶと子供たちが振り返る」という願いを、義父にあっさりと取られてしまうのです。
しかしそれこそが現実である証だと思います。
実はコブの夢では義父は一度も出てきていないんです。この義父の存在と行動こそが、現実だと決定づける証拠になり得るのではないでしょうか。
望んだ夢の通りにはいかない、自分の意識とは別の他者(義父)の思わぬ行動こそ、ここが夢ではなく現実だという裏付けになっているということです。あの場面の些細な描写こそ、か細い理論ではあるのですが、現実である証拠だと思います。
エンドクレジットをみると子役がそれぞれ2人ずつの計4人います。成長前と成長後ってことですかね。衣装を担当したデザイナーの話では、コブの夢にでてくる子供たちの服と、ラストの場面の服とは別のものだということも判明しています。
ここまで徹底するということはやはりノーラン監督は「現実」だというヒントを出していたのではないでしょうか。
パプリカに似ているのは気のせい?
インセプションは他人の夢に潜入するという設定のお話ですが、日本のアニメにも夢を扱った作品があります。日本が誇る今敏監督の「パプリカ」というアニメ映画です。
パプリカは2006年に公開されたアニメーション映画で、監督は今敏、原作は筒井康隆による同名の長編SF小説です。
インセプションは2010年公開なので、それよりも前にパプリカは公開していたということになります。
ノーラン監督が「パプリカ」にインスピレーションを得たという話もありますが、真偽は不明です。
両方観たものの見解として、テーマは同じ夢ですが、アプローチの仕方が全く違っています。内容も全く異なるので、パクリだとかそういう次元ではない気がします。
夢をあつかった作品は数多くあるので、それだけでパクリだというのは少し早計だと思いました。
とは言え、どちらも素晴らしい映画ですので、自身の目で確かめてみるのもいいかもしれません。
補足ですが、個人的な意見としてパプリカの方が断然、難解でした笑。でも面白いのでぜひ観てみてくださいねー。
裏話・小ネタ集
メンバーの頭文字を合わせると「DREAMS」になる
監督の遊び心が見え隠れしますね。
主要キャスト一覧
Dominic cobb(ドミニク・コブ)
Robert(ロバート)
Eames(イームス)
Ariadne(アリアドネ)またはArthur(アーサー)
Mal(モル)
Saito(サイトー)
頭文字を並べるとなんとDREAMSになるんです笑。ユスフがいなかったり、アーサーとアリアドネで「A」が被っていたりとちょっと強引な気もしますが。
コブの名前の由来
コブってちょっと変わった名前ですよね。まあ覚えやすいから良いんですが、実はこの名前には隠された意味があるんです。
コブはウルドゥー語、サンスクリット語、ヒンディー語、パンジャブ語では夢という意味があるんです。
監督がそこまで考えていたのかは不明です笑。
謎の数字528-491
劇中でロバートが適当に言った数字528-491。実はこの後も至るところで見かけるんです。
まずホテルの部屋番号が528号室。そして2つ目の部屋番号は491。
バーで女性がロバートに渡した電話番号にも528-491と書かれています。
数字自体に意味はないらしいのですが、ロバートが脅された恐怖からとっさに言ったでたらめな数字が、ロバートの頭にこびりついたためだと思われます。以降の夢でも事あるごとに528-491という数字があらわれています。
でたらめに言った数字が記憶に定着するほど、あの時のロバートは本当に怖がっていたんだなぁ、と思うと少し可愛く思えてきますね。
映画【インセプション】あらすじネタバレを感想・解説付きで紹介!(前編)