「レ・ミゼラブル」はヴィクトル・ユーゴーが1862年に執筆したロマン主義フランス文学の大河小説です。1862年から現在に至るまでに様々な媒体で表現されてきた伝説級の作品です。特にミュージカル版【レ・ミゼラブル】の人気は高く、世界各国で毎年上演されています。
日本で有名なのは何と言っても「帝劇のレミゼ」。迫力が違います!一生に一度は観るべき作品だと思いますので機会がある方はぜひご覧ください。ただしミュージカルに不慣れだと話の時系列が分からなくなったり、ストーリーを見失って意味が分からなくなることが多々あります。
さて、ここではそんなミュージカル版【レ・ミゼラブル】を200%理解して楽しむために2012年に映画化された映画版【レ・ミゼラブル】をおさらいしていこうと思います。あらすじを知ってからでもレミゼは充分に楽しめるので(むしろあらすじを知らないで行くと話についていけず楽しめない‥。)ミュージカルに行かれる方は、このページで予習しておきましょう。もちろん映画版もとてつもなく面白いのでよかったらご覧ください!
映画情報
【レ・ミゼラブル】2012年アメリカ映画。
格差と貧困に喘いだ19世紀のパリ。貧しさからパンを盗んだある男は19年間投獄されることになる。男の名はジャン・バルジャン。彼の生涯は波乱に満ちていた。
愛と苦悩に翻弄されながらも精一杯生きる姿は必見。何度も映像化されたヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」をヒュー・ジャックマンを主演に迎え、新たに映像化したミュージカル映画。
豪華俳優陣が魅せるオペラのような歌は観るものを圧巻させる。
キャッチコピーは「愛とは、生きる力。」
原題:Les Misérables
上映時間:158分
監督:トム・フーパー
出演:ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン)、コルム・ウィルキンソン(司教)、ラッセル・クロウ(ジャベール)、アン・ハサウェイ(ファンティーヌ)ほか
レミゼラブルのあらすじネタバレを紹介!
あらすじ1/5「ジャン・バルジャンの投獄と改心」
ある男が貧しさから子供のためにひとつのパンを盗みました。そのことで男は捕まり、19年間投獄されます。男の名はジャン・バルジャン。19世紀パリの出来事でした。
ジャン・バルジャンは長い投獄生活を終えると、仮釈放されました。しかし仮釈放中は毎月の出頭に加え、身分証に「危険人物」の烙印を押されているので、職に就くことができません。ジャン・バルジャンは無一文で餓死寸前でした。倒れる寸前のところを教会の司教がバルジャンを助けます。司教は食事を与え、休む場所を提供してくれました。しかしそんな恩を仇で返すようにジャン・バルジャンは教会の銀食器を盗み、逃亡します。
その後、警察につかまったジャン・バルジャンに司教は「銀食器は盗まれたのではなく、私が彼にあげたものだ。」と言いました。
この出来事がきっかけでジャン・バルジャンは改心しようと決意します。身分証を破り捨て、名を「マドレーヌ」と改め、第二の人生を歩むのでした。
あらすじ2/5「ジャベールとの再会、ファンティーヌとの出会い」
1823年。ジャン・バルジャンは自分が起こした事業が当たって資産家になっていました。さらに貧者や民衆の味方としてその町の市長にもなっていました。そこへ新たに警察署長に就任したジャベールという男が挨拶をしにきました。
ジャベールは、ジャン・バルジャン(現マドレーヌ)を見ると、昔投獄していた怪力の男(ジャン・バルジャン)を思い出しました。しかしそんなはずはないとその場を立ち去るのでした。
ジャン・バルジャンが経営している工場にファンティーヌという女性がいました。ファンティーヌはシングルマザーで小さな娘がひとりいました。当時父のいない子を持つ女性に対して差別的な目があったので、ファンティーヌは娘を宿屋に預けて存在を隠しながら働いていました。
ところがある日娘の存在が工場内でばれてしまい、ファンティーヌはクビにされてしまいます。ジャン・バルジャンは間に入り、穏便に取り扱うようにと工場長に強く言いました。しかし差別の目を恐れた工場長はジャン・バルジャンがいなくなった後に、ファンティーヌにここを出ていくように言うのでした。
あらすじ3/5「ファンティーヌと交わした約束」
ファンティーヌは髪を売り、奥歯を売り、娼婦に身をやつしていました。
ある日通りすがりの男にからまれているとジャベール率いる警官隊がやってきました。何事かたずねると、男はこの女に襲われていたんだと言いました。ジャベールは貧相で汚れた娼婦をいちべつすると、連行しようとします。そこへジャン・バルジャンが現れてファンティーヌをかばい、病院へ連れていきます。
ジャベールはその善良な心を持つ市長に敬意を表しました。そして自分が市長のことを脱獄犯のジャン・バルジャンなのではないかと疑っていたことを謝罪しました。実はそのころ別のところで、ジャン・バルジャンなる人物が捕まったので勘違いだったと言ったのでした。
しかしこれを聞いたジャン・バルジャンは自分のせいで無関係の人間がまちがって逮捕されていることに気づき、苦悩します。そして法廷に乗り込み、自分が本当のジャン・バルジャンであることを証言したのでした。
その後、病院を訪れるとファンティーヌはかなり衰弱していました。そして娘のコゼットを保護してほしいと言うと息を引き取ります。ジャン・バルジャンは約束すると誓い、宿屋に向かうとコゼットを引き取るのでした。
あらすじ4/5「成長したコゼットと青年マリウス」
1832年、パリは失業者があふれていました。モントルイユからパリに逃げたジャン・バルジャンはコゼットを娘のように愛し、ふたりでひっそりと目立たぬよう暮らしていました。しかしジャン・バルジャンは物乞いに施しをしていたので、「施しをする貧乏人」としてかえって目立っていました。そこに現れたのが、同じくモントルイユからパリに異動していたジャベールでした。ジャベールはジャン・バルジャンを追ってやってきたのです。
一方美しく成長したコゼットは、ある日マリウスという革命運動に身を投じる青年と出会い、恋に落ちます。愛を育む2人。しかしそこに父であるジャン・バルジャンがあらわれ、イギリスに出発すると告げて急いで準備をするように促します。コゼットは慌ててマリウスに手紙を書いて門の前に挟むと、出発してしまいました。
マリウスはコゼットを探しますが、どこにもいません。エポニーヌという女性にもコゼットを探してほしいと言いました。
しかしエポニーヌはマリウスのことが好きでした。エポニーヌは門の前に挟まっていたコゼットの手紙を取ってひそかに隠し持っていたのです。
激動の時代を迎えるパリでは革命の狼煙が上がっていました。マリウスもその渦中にいました。ある日王政側の銃弾に倒れたエポニーヌは死ぬ間際に隠していた手紙をマリウスに渡すと息を引き取ります。その手紙には行き先や住所が書かれていました。しかし自分がたどり着くことができないと悟ったマリウスは別れの言葉を書いて手紙を送ったのでした。
あらすじ5/5「ジャン・バルジャンの最後」
マリウスからの手紙は、コゼットではなくジャン・バルジャンの手に届きます。ジャン・バルジャンはその手紙を読むとこの青年を死なせてはいけないと思い、助けに行きます。
バリケード内に侵入したジャン・バルジャンは、そこで革命軍に捕まっていたジャベール警部を発見します。すぐにジャベールの拘束を解いて逃がします。その後ジャン・バルジャンはマリウスを見つけると下水道に逃げ込み、大砲の爆撃にまぎれてこの場をあとにしようとしました。そこへ逃がしたはずのジャベールが現れます。ジャベールはジャン・バルジャンたちを見送ると、生きる意味を失って自ら命を絶つのでした。
その後ジャン・バルジャンはマリウスに自分の過去を明かすと、コゼットには秘密にしておいてほしいと言って姿を消します。
その後めでたくマリウスとコゼットの結婚が決まります。そして結婚式当日、ジャン・バルジャンが修道院にいることを知ったマリウスはコゼットを連れて修道院に向かいます。
そこには衰弱して弱っていたジャン・バルジャンがいました。コゼットが駆けつけ抱きしめます。そのやさしさに包まれながらジャン・バルジャンはファルティーヌの幻に導かれるように天に召されたのでした。
レミゼラブルの豪華キャストを名言付きで紹介!
レ・ミゼラブルにはハリウッドで活躍する豪華なキャスト陣がたくさん出演しています。ここでは主要なキャスト陣を劇中での名言、名セリフと合わせて紹介していきます!
ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン役)
本作の主人公。怪力を持ちながら、決して暴力をふるわず心正しく生きようとする紳士です。不条理な時代にあらがう姿は胸が熱くなります。
ヒュー・ジャックマンの他出演作品には『X-MEN』『ウルヴァリン:SAMURAI』『LOGAN ローガン』『グレイテスト・ショーマン』などがあります。
アン・ハサウェイ(ファンティーヌ役)
父親のいない子供を産み育てていたことが職場にバレてクビにされた悲劇の女性。現代では考えられない理由で工場をクビになり、生きるため娼婦に落ちて病死します。時代の恐ろしさを痛感せずにはいられないシーンが多く、胸がしめつけられます。
アン・ハサウェイの他出演作品には『プラダを着た悪魔』『オーシャンズ8』『ザ・ハッスル』などがあります。
ラッセル・クロウ(ジャベール役)
冷徹かつ厳格な警部。ジャン・バルジャンの宿敵。劇中終盤で自分の信念が崩れ去り自ら命を絶ちます。キリスト教で自殺は禁止されているにも関わらず自ら命を絶つ行為にいたったことからジャベールの絶望がいかに大きかったかがわかります。
ラッセル・クロウの他出演作品には『グラディエーター』『アメリカン・ギャングスター』『マン・オブ・スティール』『ビューティフル・マインド』などがあります。
アマンダ・サイフリッド(コゼット役)
残酷な境遇におかれながらも優しさと明るさを持ち続けた少女。コゼットという名はファンティーヌがつけた愛称です。本名はユーフラジーです。ジャン・バルジャンが育ての親であり、コゼットはジャン・バルジャンを実の父のように慕っています。革命運動に参加していた青年マリウスと恋に落ちます。
アマンダ・サイフリッドの他出演作品には『マンマ・ミーア!』『TIME/タイム』『テッド2』『ミーン・ガールズ』などがあります。
エディ・レッドメイン(マリウス・ポンメルシー役)
パリで弁護士をしながら暮らす貧乏な青年。親友の誘いを受けて「ABCの友」という革命団体に参加します。六月暴動の際、ジャン・バルジャンに命を救われますが、仲間たちは無残にも死んでしまいます。コゼットに恋していて、この暴動をきっかけに結婚することを認められて祝福を受けました。
エディ・レッドメインの他出演作品には『ファンタスティック・ビースト』シリーズ、『博士と彼女のセオリー』『マリリン 7日間の恋』などがあります。
コルム・ウィルキンソン(司教役)
すさんでいたジャン・バルジャンを心正しき道に導いた人格者。劇中での登場シーンはあまり多くありませんが、その行動と心にしみる名言によりピックアップしました。
レミゼラブルには「命のバトンを渡して世代をつないでいく」というテーマがあるように感じた。この新旧のジャン・バルジャン共演にはそんな意味合いが含まれているのかもしれないね。
レミゼラブルの歌・楽曲を全て紹介します!
レミゼラブルはストーリーもさることながら楽曲にも素晴らしいものがたくさんあります。映画レミゼラブルで歌われた楽曲一覧を紹介していきます。
「囚人の歌」Look Down
劇中序盤に歌われる曲です。囚人たちが激しい労働を強いられながら「Look Down!」と叫び、力強く歌われているのが印象的です。
歌い手: ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、受刑者
「独白」Valjean’s Soliloquy
司教によって救われたジャン・バルジャンが葛藤と苦悩の末、心正しき道を進むことを決意する歌です。つらいことがあったときに聞くと、つらいのは自分ひとりじゃないんだと思えます。勇気をもらえる名曲です。
歌い手: ヒュー・ジャックマン
「一日の終わり」At the End of the Day
この時代を生きる労働者たちの、とくに女性の心情をリアルに表現しています。
歌い手:ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、労働者たち
「夢やぶれて」At the End of the Day
娼婦に落ちたファンティーヌが幸せだった時のことを浮かべて「もう夢は見ない。」と歌っているこの曲は悲哀と絶望に満ちています。アン・ハサウェイの美しい歌声と相まってこの曲はレミゼラブルの中でも有名な曲となっています。
歌い手:アン・ハサウェイ
「対決」The Confrontation
因縁のジャベール警部と対峙したときの曲です。正義感あふれるジャベールを見事に表現した歌声には圧巻です。自分を正義だと信じて疑わないジャベールに対してジャン・バルジャンはコゼットを守るため逃亡するのでした。
歌い手:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ
「幼いコゼット」The Confrontation
幼いコゼットが母親を想いながら歌っています。コゼットの可愛らしさや純真さと同時に切なさや寂しさも伝わってくる曲です。
歌い手:イザベル・アレン
「宿屋の主の歌」Master of the House
幼いコゼットが預けられていた宿屋の夫婦は、コゼットを奴隷のように扱います。そんな宿屋の夫婦が歌うこの曲は、高圧的で冷酷な印象を受けます。
歌い手:サシャ・バロン・コーエン、ヘレナ・ボナム=カーター、他
「サドゥンリー」Suddenly
ジャン・バルジャンがコゼットを育てる中で一抹の不安を抱えながらも幸せだと感じてしまう今の奇妙な心持を歌っています。神様を失望させるのが怖いと歌う彼の複雑な心境が表現されています。
歌い手:ヒュー・ジャックマン
「星よ」Stars
ラッセル・クロウ演じるジャベールがジャン・ヴァルジャンを必ず逮捕すると夜空の下で高らかに歌い上げ、星に誓っています。ジャベールはジャン・バルジャンを逮捕するためパリまで追ってきたのです。恐ろしいほどの執念です。
歌い手:ラッセル・クロウ
「ABCカフェ/赤と黒」ABC Café / Red & Black
学生革命運動の気運が高まっている不穏なパリを背景にマリウスが恋に落ちていく情動を歌っています。一目惚れのコゼットに対して「あれは幽霊(幻覚)なんじゃないか」と例えるあたりが、とてもキュートです。
歌い手:エディ・レッドメイン、アーロン・トヴェイト、学生たち
「プリュメ街-心は愛に溢れて」In My Life / A Heart Full Of Love
それぞれの恋心を見事に交差させた曲です。恋をした人なら必ず共感できるなにかがあるはずです。
歌い手:アマンダ・サイフリッド、エディ・レッドメイン、サマンサ・バークス
「オン・マイ・オウン」On My Own
個人的には一番切ない歌だと思います。コゼットという女性に夢中になっているマリウス。そのマリウスに密かに想いを寄せながらも、そばで見ているしか出来ないエポニーヌという女性の歌です。自分には脈がないことも分かっているが、それでも彼を愛しているという苦悩が表現されています。
歌い手:サマンサ・バークス
「ワン・デイ・モア」One Day More
物語の佳境、ジャン・バルジャンはコゼットを連れてイギリスに向かうと告げます。ジャベールはジャン・バルジャンの存在に気づき、追いかけます。コゼットとマリウスは離ればなれになる運命に悲観します。
この曲はレミゼラブルに登場する主要人物たちが人生の岐路に立たされた時のそれぞれの決意、葛藤、悲哀を込めた迫力ある名曲です。
歌い手:レミゼラブルキャスト
「共に飲もう」Drink With Me
六月暴動の前夜、仲間たちとともに決意を固め、戦う意思を表した歌です。
歌い手:エディ・レッドメイン、ダニエル・ハトルストーン、学生たち
「彼を帰して」Bring Him Home
ジャン・バルジャンはマリウスが六月暴動に巻き込まれてしまうことを知り、彼を救おうと行動を起こします。「彼は若い」と歌うジャン・バルジャンの心にはコゼットを想う親の心が確かに存在していました。
コゼットを想うからこそ「コゼットが想うマリウス」を想って行動する。まるで聖人君子のような父親です。
歌い手:ヒュー・ジャックマン
「最後の戦い」The second attack
革命軍と警察軍部による激突が過熱していき、今まさに最後の戦いが始まるという歌です。
歌い手:レミゼラブルキャスト、学生たち
「自殺」Javert’s Suicide
ジャベールはジャン・バルジャンを追い詰めるため、スパイとして革命軍に潜入します。しかし正体がばれてしまい監禁されてしまいます。そこに助けにあらわれたのがジャン・バルジャンでした。
彼に助けられたことで、ジャベールは自身の信念が崩壊していきます。ジャン・バルジャンを「悪」だと思えなくなったジャベールは失意と混乱の中、自害するのでした。
歌い手:ラッセル・クロウ
「カフェ・ソング」 Empty Chairs at Empty Tables (The Cafe Song)
六月暴動の末、ひとり生き残ってしまったマリウスの苦悩の歌です。仲間たちのいないイスとテーブルを見て、ああ自分だけが生き残ってしまったと苦しむマリウス。とても悲しい歌です。
歌い手:エディ・レッドメイン
「エピローグ」Finale
残酷な時代を懸命に駆け抜けたジャン・バルジャン。彼はやるべきことを成し遂げて息を引き取ったのでした。これまでのキャストたちが壮大に歌い上げるこの「エピローグ」には涙が自然とこぼれ落ちます。すべての「悲惨」が浄化していくような美しい歌となっています。
歌い手:レミゼラブルキャスト
レミゼラブルのタイトルの意味を解説!
Les Misérablesはフランス語です。日本語に直訳すると、「悲惨な人」「みじめな人」という意味になります。「Les Misérables」の「Les」は英語で言うところの「The」に相当する冠詞ですので、それ自体に言葉の意味はありません。
日本ではレ・ミゼラブルを児童向けに再構成した『ああ無情』という名で長く親しまれてきました。原作は文庫本で5冊もの長さに相当する量ですので、レミゼを小説で読んでみたいという方は『ああ無情』をおすすめします。実によく翻訳されていて、的確にまとめられています。
「神の御名によって、私に使命が与えられた。」
「これは憎しみを抱えた男が愛を覚えた物語だ。」