最狂最悪といわれる悪のカリスマ「ジョーカー」を皆さんはご存知でしょうか?
年齢、出自、正体が一切不明のジョーカー。
一体彼は何者で、何を目的として悪事をはたらいているのでしょうか。このページではそんな謎に包まれたジョーカーについて2019年に公開された映画【ジョーカー】をベースに徹底的に解剖していきたいと思います。
映画情報
【ジョーカー】2019年公開アメリカ映画。アメリカでもっとも有名なヴィランであるジョーカーの出自を描いた問題作。
上映に関してロサンゼルス市警で警戒態勢が敷かれ、入館時でもマスク着用を禁止するほどの騒ぎになった。子供に悪影響が出かねないとして、上映に反対する人や「現実の暴力を誘発するおそれがある」としてアメリカで物議をかもしている。
原題:Joker
上映時間:122分
監督:トッド・フィリップス
出演: ホアキン・フェニックス(ジョーカー/アーサー)、ロバート・デ・ニーロ(マレー)ほか
映画【ジョーカー】ネタバレあらすじを感想つきで紹介!究極の悪はどうやって生まれたのか!?
ジョーカーとは何者なのか?
ジョーカーとはDCコミックスの「バットマン」に登場する出自、本名、不明のヴィラン(悪役)です。
バットマンの長年の宿敵であり、その高い知性と策略で何度もバットマンは苦しめられました。
ジョーカーの特徴
ジョーカーにはどの作品にも共通して以下の特徴があります。
- 白い顔
- 赤い大きな口
- 緑色の髪
- 紫色のスーツ
- 不気味な笑い声
- 知能が高く策略に長けている
ジョーカーはバットマンに対して何故か異常に固執しており、コインの表と裏のような存在であると認識しています。
コミックスでの初登場は1940年でジョーカーは当初1話限りで死ぬ予定でした。
しかし編集の都合上生き残ることになり、現在ではDCコミックスを代表するヴィランとなりました。
ジョーカーと他のヴィランとの違い
ジョーカーはヴィラン(悪役)のなかでも一線を画す異端の存在です。ほかのヴィランにある行動原理や常識はジョーカーには一切当てはまらないのです。
ジョーカーは力もなければ特殊能力もない
ジョーカーには超人的な力や特殊能力は一切ありません。バットマンとタイマンで戦えばおそらく1分と持たずボコボコにされるでしょう。身体的に言えばただの中年男性なので当然といえば当然です。
一方ほかのヴィランは基本的に強いです。力や特殊能力を駆使してヒーローたちと戦います。本来であれば超人同士の戦いに一般人の我々が入る余地はありません。ジョーカー以外は。
それには2つ理由があります。
まずひとつ、ジョーカーにはち密な策略と高い知能があるからです。そして死ぬことを恐れないジョーカーはいつも大胆不敵です。
策略に長けた天才軍師が勝つ気がなく、ただ混沌を欲して行動するのです。勝つ気が無ければ負けは存在しません。最悪死ぬこともジョーカーにとってはジョークのひとつだからです。ある意味で無敵と言えるでしょう。
ふたつめの理由はバットマンが人を殺せないからです。バットマンは常に正しくあろうとするあまり、どんな悪人であっても進んで命を取ることはしません。
ジョーカーはそれを熟知しています。だからこそバットマンを自分と同じ変人と表現し、「俺とおまえの関係は永遠に終わらない」「コインの表と裏のようなものだ」と発言しているのです。
ジョーカーには悪事をはたらく動機がない
どんなヴィランといえども悪事をはたらく動機は必ずあります。それがそのキャラクターを形作るアイデンティティになるからです。
ヴィランによって復讐であったり、快楽であったり理由は様々です。あの有名なマーベルコミックスのヴィラン、「サノス」でさえ宇宙の調和のために人類の半分を消し去りました。悪には悪の行動原理があるのです。
しかしジョーカーは違います。金や名声に興味がなく、壮大な計画もありません。ただひたすら混沌を欲して行動するだけです。
それゆえに行動が一切読めません。ジョーカーの行動原理がわからないバットマンは後出しで行動しなければならず、先手を打つことができません。結果的にいつもジョーカーに苦汁をなめさせられるというわけです。
原作コミックスのジョーカー
アメリカではDCコミックス内で作られた作品やキャラクターはいくつもの脚本家たちによってそれぞれ派生して多くの作品を作り上げています。
それによって色々なアイデアや趣向が取り入れられる一方、作品ごとに様々な矛盾が生じています。
ジョーカーを語るとき原作コミックスを抜いて語ることはできませんが、あまり原作コミックスに焦点を当てすぎると混乱してしまいますので、基礎となるものだけ解説したいと思います。
ジョーカーの風貌は化学物質のタンクに落ちたことが原因だった
ジョーカーの特徴である緑の髪、赤い唇、白い肌は化学物質の入ったタンクに落ちたことが原因でなったそうです。ちなみに何の化学物質が入っていたかは不明です。
ジョーカーのキャラは実は二通りある?
コミックスで登場して以来、様々な悪事を働いてきたジョーカーですが、アメリカで発足されたコミックス倫理規定委員会による規制によって性格がコロコロと変わってしまうという悲劇に遭います。
当初、犯罪集団の首謀者として邪悪でサイコパスな性格だったのですが、1950年代に入るといたずら好きなただのマヌケ男になってしまいます。その後1970年になって規制が緩和され、ジョーカーはようやく元の邪悪な悪者に戻れたようです。
多くの作品で採用されている「バットマン:キリングジョーク」
原作コミックス「バットマン:キリングジョーク」ではジョーカーは売れない芸人でした。妊娠した妻とお腹の子を死なせたことから正気を失いジョーカーへと変貌します。
この「バットマン:キリングジョーク」の設定は比較的多くの物語で採用されていて、売れない芸人という設定は今回の映画【ジョーカー】にも採用されています。
原作コミックス「ジョーカー」の正体まとめ
ジョーカーの過去や正体に触れた作品はありますが、公式の見解ではこう発表されています。
「ジョーカーの過去に関する物語は、ジョーカー自身がすでに錯綜しているため真実かどうかは不明。」
つまり公式設定ではジョーカーに関する過去や本名について決定的なものはまだ確立されていないということです。
結局正体は不明なのか~。
だからこそいくつもの作品で異なったジョーカーが楽しめるとも言えるね。
ジョーカーの壮絶な過去!バットマンは兄弟!?
原作コミックスの公式設定で過去は不明ですが、今回は映画【ジョーカー】をもとに彼の過去を振り返っていきたいと思います。
映画【ジョーカー】では売れない芸人アーサー・フレックが母の介護をしながら自身も心理カウンセリングを受けて懸命に生きていました。
ところが数々の不運の連鎖が巻き起こり、ついにはジョーカーとして裏返っていくというお話です。
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手紙から発覚した隠し子疑惑
劇中でアーサー(のちのジョーカー)が実はトーマス・ウェインの隠し子なのではないかという事実が浮かび上がります。事の発端はアーサーの母ペニーが密かに送り続けた手紙を発見したことがきっかけでした。
トーマス・ウェインとはブルース・ウェイン(のちのバットマン)の父であり、大富豪の実業家です。
アーサーが隠し子である事実が本当ならブルース・ウェインとアーサー・フレックつまり、のちのバットマンとジョーカーは異母兄弟であることが確定します。
トーマス・ウェインの証言
アーサーはなんとか事の真相を聞こうとトーマス・ウェインに会い、真実を聞き出そうとします。
しかしトーマス・ウェインからは「そんな事実はない。お前の母親は精神を病んでいるだけだ。それにお前はペニーの実子ではなく、養子だ。」とまさかのさらなる事実を突きつけられたのでした。
アーサーは病院の記録から母が精神をわずらっていること、自分は母とは血のつながりがない養子であることを知り、愕然とします。そして自身の病が母の元恋人から幼いころに受けた虐待が原因であったことを知ります。激怒したアーサーは母ペニーを殺してしまいます。
ここまでの流れを簡単にまとめると、
- アーサーがトーマスの隠し子である可能性が浮上
- そうであればバットマンとジョーカーは異母兄弟ということになる
- 真実を確かめにいくが、すべて否定される
- さらなら事実として自分が母の実子ではなく養子であることを知る
ということになります。
なんだ。じゃあ結局バットマンとジョーカーは兄弟じゃなかったのか。
写真を握りつぶす意味深なシーン
ところが数日後のことです。楽屋にてアーサーがピエロのメイクをしている時、ひとつの写真をじっと見るシーンがあります。
そこには若かりし頃の母ペニーが映っていました。
そして裏には親しい間柄であることがうかがえるメッセージとT.W.(トーマス・ウェイン)と添えられたサインがあったのです。
アーサーは静かにその写真を握りつぶします。
これは一体どういうことでしょうか。
※ここからは個人的な推測です
可能性はふたつ考えられます。ひとつは母ペニーの言っていたことが正しくてアーサーは隠し子だったという可能性です。
この場合、バットマンとジョーカーは異母兄弟と言うことになります。
もうひとつはトーマス・ウェインの言っていたことが正しくてアーサーは養子だったという可能性です。
この場合だと、アーサーは隠し子どころか母とは何の血のつながりもない養子と言うことになります。もちろんバットマンとのつながりもありません。
写真をどう捉えるかで解釈は分かれると思います。個人的な推測から言うとアーサーが隠し子であった可能性は高いのではないかと思っています。
もちろんトーマス・ウェインの言っていたことが真実で写真はただ親しい友人に向けて書いたメッセージだったという可能性もあります。
しかし一方でトーマス・ウェインほどの大富豪ですから、隠し子の存在を隠すためにペニーを精神疾患をわずらっている妄言者と診断させて、アーサーを養子として手続きを済ませたという可能性もあるわけです。だとするとトーマス・ウェインは極悪人ですね‥。
ただ後者の方向で考えると、トーマス・ウェインが数十年経った母ペニーを覚えていたことにも納得がいきます。
また前者の方向で考えると一介の家政婦だったペニーにまるで恋人に送るようなメッセージを添えた写真を送ることにも違和感が生じます。
アーサーが静かにその写真を握りつぶした心情は計り知れません。しかしなにか確証めいた表情をしていたようにも感じられました。
個人的にはアーサーが最後、ジョーカーに裏返るきっかけになった要因がここにあるような気がしてなりません。
アーサーの心うちに「俺をだましたな‥。」という感情があったとするならば、それは母親に対してでしょうか。それともトーマス・ウェインに対してなのでしょうか。真相はアーサーの心の中だけにあります。
なぜジョーカーはバットマンに固執するのか。ジョーカーが発した「俺とお前はコインの裏と表だ」という発言もこの背景を知ってから聞くとなにか意味深な言葉のように聞こえてきませんか。
真実は明らかにされていませんが、映画【ジョーカー】はそんな奥行きを持った作品となっていますので、ぜひご覧になって考察をしてみると面白いかもしれません。
ジョーカーを演じた歴代俳優を紹介!
今作映画【ジョーカー】のジョーカー役を演じるのはホアキン・フェニックスです。
その見事な演技には息を飲むばかりですが、歴代ジョーカーを演じてきた他の俳優はどんな人たちだったのでしょうか。ここで6人(+1人)の歴代ジョーカー俳優たちを紹介していきたいと思います!
シーザー・ロメロ
1966年~1968年TVシリーズ「怪鳥人間バットマン」にてジョーカー役で出演。
初代ジョーカーとも言われるシーザー・ロメロですが、この作品のジョーカーはかなりコメディ要素の強いキャラクターで現在のジョーカー像とはかけ離れた性格をしています。
ジャック・ニコルソン
1989年映画「バットマン」にて出演。
当時あの大御所俳優ジャック・ニコルソンがジョーカー役を務めたことで話題になりました。
こちらもコメディ要素が少しありますが、そこは名優ジャック・ニコルソンの腕の見せ所。コメディと不気味さを両立した素晴らしい演技を見せてくれました。
ヒース・レジャー
2008年映画「ダークナイト」にて出演。
言わずもがな伝説とされるヒース・レジャー版ジョーカー。
第81回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したほどの演技力は観ていて引き込まれます。
カリスマ的なジョーカー像を作り上げた名優ですが、惜しくも「ダークナイト」公開前に28歳という若さでお亡くなりになりました。
ジャレッド・レト
2016年映画「スーサイド・スクワット」にて出演。
俳優が悪いのか脚本が悪いのか。どうも小物臭のするジョーカーでした。役作りに精を出すあまり、本番中以外にも出演者に豚の死骸を送りつけたりと奇行が目立ったそうですが、うーん。なんとも残念な出来でした。
キャメロン・モナハン
2014年TVシリーズドラマ「GOTHAM/ゴッサム」にて出演。
これまでとは違う怪物じみたジョーカーを演じたことで高く評価されています。ドラマシリーズでは徐々に変貌を遂げていくジョーカーの過程を見事に演じ切りました。
ホアキン・フェニックス
2019年映画「ジョーカー」にて出演。
ジョーカーと言う人間を究極まで煮つめた演技は鳥肌ものです。越えられないと思われていたヒース・レジャー版ジョーカーに新たな視点から可能性を広げ、追い抜いたその演技は圧巻の一言です。
素晴らしい偉業を成し遂げたホアキン・フェニックスは役作りのため約24キロもの減量をしたそうです。まさに命がけです。本当に素晴らしい。
マーク・ハミル
90年代以降アニメ・ゲームシリーズ「バットマン」にて長年声優を担当。
ジョーカーを演じた歴代6人の俳優以外にも、もうひとりジョーカー演じた俳優がいたのをご存知でしょうか。
あの「スターウォーズ」のルーク・スカイウォーカーでおなじみのマーク・ハミルです。
彼はアニメ版「バットマン」で長年ジョーカーの声優を務めました。アニー賞にも2度受賞されている名演で高く評価されています。
ジョーカーを演じた年数で言えば断トツでマーク・ハミルの圧勝です。アニメ版以外にもゲーム版や劇場アニメのジョーカー役もしているのでジョーカーは彼の代表作ともいえるでしょう。
ジョーカーが生み出した名言集を紹介!
ジョーカーには多くの名言があります。人生経験豊富なジョーカーの言葉には心に突き刺さる何かがあるのかもしれません。ここではその一端を紹介していきましょう。
この腕前はタダじゃないぜ
ジョーカーはたとえ得意なことでもタダでは引き受けません。しっかりとプロの腕前に見合った報酬を要求します。
映画「ダークナイト」でもマフィアの財産の半分を要求しました。しかし、お金が好きというわけではないらしく、結果的にマフィアの前でお金をすべて燃やしてしまうのでした。
準備と計画は必ずしもイコールではない
突発的で予測不可能な行動を起こすジョーカーですが、自身の犯罪計画を成就させるために入念な準備と計画を立てます。
策略に長けたジョーカーらしい名言です。
月夜に悪魔と踊ったことはあるか?
このセリフはジャック・ニコルソン版ジョーカーが劇中で言った名言です。知性を感じさせる詩的な表現は、ジョーカーがただの狂人ではないことを物語っています。
why so serious?(なぜそんなに真面目なんだ?)
映画「ダークナイト」でヒース・レジャー版ジョーカーが言った名言です。ジョーカーにとってこの世はただのジョーク(冗談)です。他人が深刻そうな顔をしているのが理解できないジョーカーはwhy so serious?(なぜそんなに真面目なんだ?)と問いかけます。
この言葉には自らの命さえもジョークだと考えるジョーカーの性格がよく表れています。
映画【ジョーカー】誕生小話
トッド・フィリップス監督はマーベルは化け物で勝てないから、DCはDCなりの攻め方をしようと提案したそうです。具体的な提案として、今までのヒーローを低予算で大人向けに展開していくというものです。
しかしDC側は「まあまあ落ち着いてください。」と言った感じで流したそうですが、ジョーカーの話にはGOサインが出されて今回の映画制作につながったそうです。
「ジョーカー」の映画化には提案した本人も驚いたようです。トッド・フィリップス監督はこんな有名なヴィランをここまで自由に作らせてくれるなんて一番大胆なのはDCコミックスだよ。とその寛大な心を称賛したそうです。
マーベルとは違う、大人向けのDCアベンジャーズ。個人的には監督の意見には大賛成ですね。DCはマーベルとは違う手法で戦った方がDCの良さが出るので良いんじゃないかと思いました。
マーベルは全年齢向けのコンテンツ。DCは大人向けのコンテンツ。住みわけもできて良いと思うけどなー。